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しろまち堂~本館・こちらは新館です~

読んだ本のなかでも、イチ押しおススメの本をご紹介しています。 FC2の『しろまち堂~本館(休館)~』( http://honwagohan.blog19.fc2.com/ )から引っ越してきました。よろしくどうぞ

雨ニモマケズ Rain Won't(宮沢賢治・著 アーサー・ピナード・英訳 山村浩二・絵 今人舎) 

 なんとなくですが、お天気がいいときよりも悪いときに読むほうがしっくりくるかも?です。

雨ニモマケズ Rain Won't

宮沢賢治 今人舎 2013-11-06
売り上げランキング : 60833

by ヨメレバ

 

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
アニメーション作家・山村浩二の絵と詩人・アーサー・ビナードの新訳が出会う、本当の宮沢賢治里山

 

さりげないコラボレーション

英語と日本語の対訳絵本…と評するべきなんだろうなあ、と思いつつも抵抗を感じてしまい、どうしてなのか考えました。

 

勝手な思い込みなんですけど、わたしの中に『対訳絵本』って、お勉強のための本ってイメージがあったみたいです。
そして、日本語の絵本の完成品に英語をつけたしたものでもあると。
なるほど。そう考えるとこの絵本はその範疇には収まりませんね。
思い込みイメージでは、たいてい英語がつけたされているため誌面のバランスが崩れているというか、はっきりいうと英語がオンされている分 文字が過剰だと感じるものが多いんですね。
絵本って、絵と文章のバランスも視覚的に大事なので、このバランスが美しくないと残念に感じてしまいまして。
逆にいうと、フォントまで含めて最高バランスだと「こんないい絵本はない!」と感激しちゃうと。そういう思考回路をしているようです。(書いているうちに逆引き的にわかってきました)

 

で、そういう意味で捉えると、この絵本は英語と日本語と絵をすべて組み合わせての誌面デザインがされているので、過剰なところのない<完成品>なわけです。
英語をメインテキストの場所に置きつつも、日本語がオマケではなく、誌面として見たときに落ち着きのいい場所に配置されています。
そして両方の文章をどっしりと受け止め、詩の世界をさらに豊かに広げる絵の数々。

 

宮澤賢治作品というのは、画家の作品欲を刺激するんだろうなあ、というのは、多数出版されている絵本を見ながらよく考えることです。
著作権が切れる前から、そして著作権が切れて出版しやすくなっただろう時期からはもっとたくさんの作品が出版されていて、それらはたいてい勢いがいいというかパワーが強いというか、「どうだ」って表紙からグッとアピールしてくるものが多いように感じます。
でも、この『雨ニモマケズ Rain Won't』はものすごくおとなしやかな佇まいで、ふと気づいたらそこにいたんですね…、という雰囲気。
色合いが抑え目なのもあるとは思うんですが、それだけじゃないんですよね。水墨画のように静かで深い世界観で、賢治の手帳の世界がそのまま立ちあがってきたかのような趣です。

 

文章については、わたしは英語のレベルめっちゃ低いんで、絶対的な評価というのはできっこないですけど、日本語に通暁しているピナードさんの英訳ですからきっと大丈夫なはず。というか、わたしレベルの英語力でもいいなあって感じたんだからきっとわかりやすくて素敵な英訳なんでしょう。
詩としての英語のリズムと内容の表現を両立させるのはさぞ難しいと思うんですけどね。音読していて、とても心地よかったです。これ、男性の方の音読を聴いてみたいなあ。それこそピナードさんのお声で、とか。

 

ご存じの方も多いと思いますが、「雨ニモマケズ」は賢治が手帳に残した走り書きのような詩で、出版を目的とした完成作品ではありません。
その未完であり荒削りであるがゆえに賢治の人柄・心映えがそのまま映し出されていて、それが作品の大きな魅力です。
その素朴さが非常によく活かされた絵本になっていると思いました。

 

「読む」というよりも「愛でる」というほうがふさわしいんじゃないかな…と感じるこの絵本、
どこかで見かけたときにもし思い出していただけましたら、お手にとって愛でてみてください。

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